時に想定外の話と言うものは人の興味をそそるものである。

標高約900mの山上に突如開けた土地が出現する。

天空の仏教都市『高野山』だ！

ここにも想定外の話が紛れ込んでいる。

東西約6km南北約3kmの盆地は八葉の峰々に囲まれている。八葉とは蓮華の花びらを象徴し、その地形は「蓮華の花が開いたような」と表現される。

この地に弘法大師空海が真言宗（しんごんしゅう）の道場を開いて今年（2015年）で1200年目となる。

さすが1200年の歴史を持つ真言宗の聖地だけあって無数の仏教施設が建立されている。

以下、主なものを簡単に紹介しよう。

大門（だいもん）：高野山の玄関口に屹立（きつりつ）している。その名に相応しく巨大な楼門である。

中門（ちゅうもん）：高野山開創1200年を記念して172年ぶりに再建された高野山の中で一番新しい建造物（2015年現在）。

根本大塔（こんぽんだいとう）：真言密教の根本道場として建立された高さ48.5mを誇る高野山のランドマーク的存在。

金堂（こんどう）：総本堂として重要な役割を果たしてきた。本尊の薬師如来は高村光雲（たかむらこううん）作。

不動堂（ふどうどう）：高野山の中で一番古い建造物。

金剛峯寺（こんごうぶじ）：高野山真言宗3600寺、信徒1000万の総本山。

徳川家霊台（とくがわけれいだい）：徳川幕府初代将軍家康と二代将軍秀忠の御霊を祭る霊屋。

ところで真言宗についてだが、真言宗は秘密宗（ひみつしゅう）とも称し、空海が中国（唐時代）の長安に渡り、そこで学んだ密教を基盤としている。

空海の渡った長安で発掘され、現在は西安碑林博物館に保管されている古碑をご存じだろうか？

この碑は唐時代に建立されたもので「大秦景教流行中国碑（だいしんけいきょうりゅうこうちゅうごくひ）」と刻まれている。

「大秦」とはローマ。「景教」とはキリスト教のことである。つまり「大秦景教流行中国碑」とは「ローマのキリスト教が、中国で流行したことを讃える碑」となる。

つまり空海は中国でキリスト教が流行していた時代に長安に渡ったことになる。

そして空海はキリスト教も学び日本に持ち帰ったと言うのだ！

空海の唱えた真言密教の内容に着目すると明らかに仏教と異なるらしい。景教、つまりキリスト教の影響が出ている事が歴然としているそうだ。

高野山の中でも中心聖地とされる奥之院には空海の御廟（ごびょう：先祖の霊や貴人の霊をまつる殿堂）がある。

そこへ向かう参道沿いには二十万基ともいわれる墓碑・供養塔が並び、周りは高くそびえる杉木立に包まれ神秘的で厳かな様相を漂わせている。

墓碑・供養塔には織田信長、武田信玄、豊臣家、薩摩島津家などなど戦国時代の名だたる武将達のものも多く含まれる。

↑豊臣家墓所

その中に混ざって場違いな石碑が存在する。

その石碑には、なんと「大秦景教流行中国碑」と刻まれている！

そう、これは西安碑林博物館に保管されている大秦景教流行中国碑の複製なのだ！

ヴィクトリア女王の女官をつとめた後、オックスフォード大学でマックス・ミューラー（ドイツ･デッサウに生まれ、イギリスに帰化した東洋学者、比較宗教学者、仏教学者）に師事して比較宗教学を修めたE. A.ゴルドン夫人によって建てられたものだ。

ゴルドン夫人は日本の文化を愛し長期間滞在する中で仏教の研究をした｡　彼女の研究テーマは「仏基一元」だった。仏教もキリスト教も元は一つであるという考えである。

にわかには信じられないことではあるがゴルドン夫人以外にも多くの研究者が仏教とキリスト教のつながりについて言及している。それらを読めば読むほど否定出来なくなる。

金剛峯寺を訪れた際に和尚様の説法を聞く事が出来た。

「尊敬される要素は能力が２０％で人柄が８０％です」と言う言葉が印象に残っている。

自分の能力に溺れず人の話に素直に耳を傾ける人柄が尊敬される要素だと自分なりに解釈した。

キリスト教と仏教のつながりにおいても否定から入るのではなくニュートラルな視点で見る事が大事なことだろう。そのような積み重ねが尊敬される事へつながるのではないだろうか。

【English WEB】

http://japan-history-travel.net/?p=5823