壬生菜の産地で誕生した新撰組

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壬生寺

海から離れている事。多くの寺社を中心に精進料理が発達した事。これらの理由により京都に住む人々の食生活は野菜によって支えられて来たと言えるかも知れません。

全国から持ち込まれた野菜が、農家の方々の工夫と特有の気候風土や良質の水によって育まれた事から独特な土着の野菜品種へと変化して行きました。

それが京野菜です。

京野菜の一つに壬生菜(みぶな)があります。

京都の特産品!丸葉壬生菜(一般種) 数量:8ml - クラギ

京都の特産品!丸葉壬生菜(一般種) 数量:8ml

水菜(みずな)の一種で1800年頃(寛政年間)に壬生村(現京都市中京区壬生地区)で葉っぱに切れ込みのない菜が発見されて以来盛んに栽培されるようになった事から壬生菜と呼ばれています。ただ、残念ながら都市化が進んだ現在では壬生地区周辺で壬生菜の栽培はされていません。

壬生菜が生まれた土地で誕生した別のものがあります。

「壬生浪士組(みぶろうしぐみです)」です!

なんだそれ?と思う人もいるかも知れませんね。

では「新撰組(しんせんぐみ)」ならどうでしょう?知っていますよね。

壬生浪士組は新撰組と改名する前の名称です。

大変大雑把ですが知らない人もいると思いますので新撰組の誕生について説明をしますね。

説明の後にお抹茶を一杯接待させて頂きますので少々長くなりますがお付き合い下さいm(_ _)m

幕末の京都は尊王攘夷(そんのうじょうい:天皇を尊び、外敵を撃退しようとする思想)の嵐に巻き込まれ各地から尊攘派志士が集結し「天誅」と称して反対派に対する暗殺・脅迫行為が繰り返されていた為、京の町は大変物騒な状態でした。

そんな京都の治安を維持する為に京都守護職(きょうとしゅごしょく)に任命されたのが会津藩第9藩主・松平容保(まつだいらかたもり)です。京都守護職と言うのは現代の警察に当たる京都所司代の上層機関として設置されたものです。

警察力では手に負えないくらい物騒な為、軍隊に近い機関を設置したと言ったところでしょうか。

そして容保公から、主に不逞浪士の取り締まりと市中警備を任されたのが壬生浪士組です。

壬生浪士組は壬生村の八木邸や前田邸などを屯所(とんしょ:兵隊の駐在所)として活動していた為、壬生浪士組と名乗っていました。

01 八木邸

↑八木邸

そんな中、1863年(文久3年)8月に「八月十八日の政変」が起きます。

八月十八日の政変とは朝廷(公)の権威と、幕府並びに諸藩(武)を結びつけて幕藩体制の再編強化をはかろうとした会津藩・薩摩藩を中心とした公武合体派(こうぶがったいは)が長州藩を主とする尊皇攘夷派を京都から追放したクーデター事件を言います。

壬生浪士組はこの八月十八日の政変に出動し活躍します。そして、その時の働きを評価され、新たな隊名「新選組」を拝命されます。

新撰組の誕生です!

屯所の中でも八木邸は近藤勇(こんどういさみ)始め、土方歳三(ひじかたとしぞう)など新撰組の幹部が使用していた為、新撰組発祥の地とされています。

02 八木邸

↑八木邸

この八木邸は現在も残されており拝観料を支払えば邸宅内をガイド付きで見学する事が出来、見学後にはお抹茶と和菓子を頂く事が出来ます。

和菓子は屯所餅と言い、お餅には壬生菜が刻み入れてあります。粒あんの甘さと壬生菜の辛みがほんのり混ざった美味しいお餅です。

それではお約束通りお抹茶を一杯接待させて頂きます。屯所餅と一緒にどうぞお召し上がり下さいm(_ _)m

03 八木邸_お抹茶と屯所餅

お抹茶を飲んだ後は八木邸のすぐ近くにある壬生寺へ行きましょう。

このお寺は新撰組の兵法調練場に使われ、武芸などの訓練が行われました。

04 壬生寺

05 壬生寺

境内には近藤勇の銅像や新選組隊士の墓である壬生塚など新撰組ゆかりのものを見る事が出来ます。

06 壬生寺_近藤勇像

↑近藤勇の銅像

07 壬生寺_壬生塚

↑壬生塚

話を壬生菜に戻します。

京野菜を使用した代表的な食べ物と言えば「千枚漬け」ですね。千枚漬けには壬生菜の塩漬けを添える習わしになっています。

なぜ壬生菜を添えるのか?

千枚漬けは幕末に朝廷において宮中の食事や儀式の饗膳(きょうぜん)などをつかさどった大膳職(だいぜんしき)の大藤藤三郎(おおふじとうさぶろう)という人によって考案されたと言われ、めでたさを表す青松に見立てた壬生菜を添え、千枚漬と名付けたそうです。

【千枚漬本家大藤】 御歳暮に ◎ 千枚漬 6.5寸 - 千枚漬本家 大藤

【千枚漬本家大藤】 御歳暮に ◎ 千枚漬 6.5寸

ところで壬生村は水質にも大変恵まれていた為、壬生菜以外にも、菜種、藍などの産地でもあったそうです。新選組が使っている羽織の段だら模様は、その藍で染めた水色のようです。

壬生菜は水菜に比べてピリッと辛口です。真っ白な千枚漬けに添えられた緑色の壬生菜は千枚漬けの味も見た目も引き立てます。

壬生で誕生した新撰組は水色の羽織をまとい壬生菜のような辛口の存在として京の町で活動しました。

単調な色彩や状況に別の色どりや刺激を与える事で状態が一変する事もあります。何か物事に息詰まった時には異なる刺激を加えてみてはどうでしょうか?何か新しい発想が芽生えるかもしれませんよ。

壬生地区に訪れた際にはかつて壬生菜が栽培されていた風景の中を新撰組が駆け回る情景に思いを馳せましょう!

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