寝覚の床に残る伝説はどこまで信憑性があるのでしょうか?

このエントリーをはてなブックマークに追加

寝覚めの床

使う文字によってイメージはガラッと変わってしまいますね。

例えば漢字で表記されたものは堅さや古さのようなものを感じるでしょうし科学用語や横文字で表記されたものはなんとなく新しさを感じるでしょう。

「日本書紀(にほんしょき)」は全30巻から成り日本に現存する最古の正史で奈良時代に成立した日本の歴史書です。漢文・編年体を採用し神代から持統天皇の時代までを扱い720年に完成しています。

「丹後国風土記(たんごのくにふどき)」は、8世紀中頃には完成したと推測される丹後国(現在の京都府北部)の風土記です。

「時間の遅れ」英語で「タイムディレーション(Time dilation)」は相対性理論が予言する現象で、運動している状態や、重力場の強さによって時計の進み方が異なることを指します。

具体的に説明すると宇宙船が光速の90%の速度で航行している時、宇宙船の中の時計の刻み幅は宇宙船の外の静止状態の場合と比較して約0.44倍、つまり宇宙船の外の時計が1年間を指す時、宇宙船内の時計は、まだ0.44年。要するに5ヶ月半しか経過していない事になります。

「万葉集(まんようしゅう)」は7世紀〜8世紀後半にかけて天皇や貴族、あるいは防人(さきもり)や下級役人など様々な身分に渡る人間が詠んだ4,500以上もの歌を集めた現存する日本最古の和歌集です。

「ザイガニック効果」とは旧ソ連の心理学者ブルーマ・ツァイガルニクの実験によって実証された効果です。

テレビを見ていたら肝心なところでCMになってしまった。あるいはCMを見ていたら続きはWEBをご覧下さいなんて事がありますね。この場合続きが気になってしまうでしょう。

人は完成されたものより、未完のものの方が印象に残りやすく、興味を引かれてしまう傾向にあります。ザイガニック効果とはこのように期待を持たせておいてそれを遮断し、未完の状態にする事によって関心を持たせる効果を言いマーケティングの分野では広く活用されています。

堅さを感じる漢字で書かれた古い文献の説明、科学用語の説明や横文字のマーケット効果の説明を交互にさせて頂きました。

何だこれ?って思いますよね。

これらはむやみやたらに選んだ訳ではありません。ある共通項によって結ばれています。

さて何でしょう?

答えは「浦島太郎」です。

浦島太郎が文献に初めて登場するのが日本書紀です。

日本書紀とほぼ同時代の丹後国風土記、万葉集にも浦島太郎の記述が見られるようですが、丹後国風土記の物語が桃太郎の原型と解されており内容的にも一番詳しいそうです。

ここまで来たら相対性理論の時間の遅れとザイガニック効果についてはもうお気付きですね。

相対性理論の時間の遅れは浦島太郎が竜宮城に行って過ごした数日間に、地上では何百年という時間が過ぎていたという話と一致しますね。

そしてこの相対性理論の時間の遅れを日本では「ウラシマ効果」と呼んでいます。

一方、ザイガニック効果は玉手箱の話に通じます。

渡された玉手箱を開けてはいけないと言われれば開けて見たくなる。浦島太郎は正にザイガニック効果にはまってしまったと言うわけです(^^;

浦島太郎は古い内容に新しい考えが織り込まれた古くて新しい物語と言えますね(^^)

さて、日本書紀、丹後国風土記、万葉集に登場した浦島太郎ですが私達がよく知る昔話として定まったのは室町時代に成立した短編物語「御伽草子(おときぞうし)」からとされ、その後は様々な媒体を通して流通するようになったようです。

ところでこのような経緯で現代まで受け継がれている浦島太郎ですが中国、ミクロネシア、アイルランドなど世界各地に同じような物語があるそうです。

そして、世界もさることながら日本にも全国各地に伝説の場所があります。どこが発信源なのでしょうか?

ニライカナイ。。。。。沖縄や鹿児島県奄美群島の各地に伝わる伝承や信仰にある他界概念の一つ。遥か彼方の海、あるいは海の底にある異界の事を指します。

沖縄諸島では浜辺を訪れる亀は神様として大切にされているそうです。

1995年、与那国島近海の海底で人為的に加工されたとも思われる一枚岩が発見されました。これは与那国海底遺跡と呼ばれています。

以上のような理由から沖縄が浦島伝説の有力な発祥地の一つとして挙げられています。

与那国海底遺跡が竜宮城とするならば玉手箱はどこで開けられたのでしょうか?

その有力候補地の一つが「寝覚の床(ねざめのとこ)」(長野県木曽郡)です!

01 寝覚の床

緑の山あいを流れる木曽川の流れが造り上げた花崗岩のアートはその周りの風景と異なる雰囲気を醸し出しています。

巨大な屏風岩、亀岩や浦島堂がおとぎ話の世界を表現しているかのようです。

02 寝覚の床

03 寝覚の床

寝覚の床を上から見渡す事の出来る臨川寺(りんせんじ)。その建立の由来を記した『寝覚浦嶋寺略縁起』によれば浦島太郎は竜宮城から帰った後、日本諸国を周りこの地に辿り着いたとしているそうです。

04 臨川寺

↑臨川寺

05 寝覚めの床

↑臨川寺境内から見た寝覚の床(手前はJR中央本線)

その臨川寺の境内には浦島太郎の姿見の池があり、宝物館には浦島太郎が使用されたとされる釣竿、硯石や筆などの文具が展示されています。本物か否かは別にして興味をそそられますね。

06 臨川寺_浦島太郎姿見の池 ↑浦島太郎姿見の池

07 臨川寺_宝物館

08 臨川寺_宝物館↑臨川寺宝物館

09 臨川寺_宝物館

↑浦島太郎が使用されたとされる釣竿

10 臨川寺_宝物館↑浦島太郎が使用されたとされる文具

寝覚の床には浦島太郎以外に室町後期の成立とされる謡曲「寝覚」に長寿の薬を民に供していたとされる「三返りの翁(みかえりのおきな)」が住んでいたと言う伝承が残さています。ここには翁は千年来、寝覚の床に住んでいるが、薬を使って3度若返ったので「三返りの翁」の名称がついたと説明されているそうです。

この伝承が浦島太郎のおとぎ話と合わさって寝覚の床が玉手箱を開けた場所として広まったのかもしれませんね。

世の中は科学で解明されていない事だらけです。浦島太郎の話も本当にあった事なのか作り話なのかは分かりません。科学が進歩して高速の90%で航行するロケットが開発されればその真実が解明されるかもしれませんね。

それまでは伝説の域にある寝覚の床に行って想像力を働かせながら浦島太郎の物語を楽しみましょう!

このエントリーをはてなブックマークに追加