アイヌ語の地名が残る六郷湧水群に関わった人物とは?

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御台所清水

冷たく透き通った水は心の底まで清々しい気持ちにさせてくれます。

約60箇所の湧水からなる秋田県美郷町の六郷湧水群(ろくごうゆうすいぐん)を訪れた人は日頃のストレスから解放されるでしょう。

背ビレの前半がヒレではなく棘が並んでいるトゲウオ科トミヨ属に属するトミヨと言う魚がいます。トミヨは15℃前後の綺麗な冷水を好む為、北海道・東北などの気温の低い地域に生息しています。

中でも秋田県南部内陸地方を中心に分布する「雄物型」のイバラトミヨは秋田県及び環境省の定めたレッドリストで「絶滅危惧種IA」に指定されているほど稀少な品種であり最近の研究では80万年前の氷河期の個体のまま生き残って来た事が分かっているそうです。

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↑イバラトミヨ(出典:ウィキペディア)

六郷湧水群はそのイバラトミヨが生息する地域の一つです。

イバラトミヨと言う名前は少し変わっていますが六郷湧水群にもニテコ清水キャペコ清水などの変わった名前の湧水地が存在します。

02 ニテコ清水↑ニテコ清水

03 キャペコ清水↑キャペコ清水

トミヨを漢字で書くと「止水魚」あるいは「富魚」となり、きれいな水が豊富な所、人も住みやすく自然豊かな場所にいる魚という意味だそうです。

ではニテコやキャペコはどのような意味があるのでしょうか?その語源を調べてみました。

ニテコは水溜りの低地という意味を持つアイヌ語「ニタイコツ」が転化した言葉のようです。ニテコ清水の湧水で造られた仁手古(ニテコ)サイダーはとても美味しですよ!

04 仁手古サイダーとニテコ清水↑仁手古サイダーとニテコ清水

キャペコもまたアイヌ語で睾丸という意味だそうです。なぜそんな名前をつけたのでしょうね(^^)

ちなみに六郷と言う地名も清い水溜りのある処と言うアイヌ語のルコ・コッツイが訛って六郷となったと言う説があるそうです。

東北にはアイヌ語を語源とする地名が多くありこのことからアイヌが住んでいた痕跡とされています。

それでは他の六郷を代表する湧水地の語源はどうなのだろかと思い少し調べました。

御台所清水:秋田久保田藩の第2代藩主佐竹義隆(さたけよしたか)が鷹狩りの際、料理用の水としてこの清水の水を使用したことからこの名前が付いた。

05 御台所清水↑御台所清水

諏訪清水:秋田諏訪神社境内にある。

06 諏訪清水↑諏訪清水

07 秋田諏訪神社

↑秋田諏訪神社

宝門清水:江戸時代後期の旅行家・菅江真澄(すがえますみ)の絵詞「月の出羽路・仙北郡六郷高野(似手児の清水)」に 「宝門清水また法門清水に作れり」とある。昔、照楽寺と言うお寺がありこの地を掘り泉を得た。門に宝を得るの意味をもって 「宝門清水」とした。

08 宝門清↑宝門清水

色々な意味があって面白いですね。

ところで、これらの湧水地の語源は共通のある人物と何らかの形でつながっています。

●御台所清水の語源に関わる佐竹義隆は佐竹義重(さたけよししげ)の三男。

●宝門清水の語源に関わった照楽寺の山号は宝門山であったが後に佐竹義重の命に より「法望山」に変更された。

●諏訪清水の語源に関わる秋田諏訪神社は佐竹義重により社殿等が造営されると共に現在の場所に移っている。

もうおわかりですね。共通の人物とは佐竹義重です。

佐竹義重は戦国時代に常陸(ひたち:現在の茨城県)の太田城を中心に北条氏、伊達氏と争いながら勢力を拡大した大名です。北条氏の小田原攻めでは嫡男の義宣(よしのぶ)を参陣させることで豊臣秀吉から領地を安堵されています。その後、義宣に家督を譲りましたが関ヶ原の合戦後佐竹家は秋田へ転封となりました。

転封後は相次ぐ反佐竹一揆に対応する為、義重は義宣とは別に六郷に城を構え所領南部の見張りを行いました。

六郷は義重が晩年を過ごした隠居の地だったと言うわけです。

そんな六郷地区には前述した湧水地以外にも周囲を藤・杉などの木々に囲まれた藤清水

09 藤清水↑藤清水

酒屋ハタチやさんの敷地内にあるハタチや清水などが点在しており訪れた人を癒してくれます。

10 ハタチや清水

↑ハタチや清水

話を始めに戻しますが六郷に生息するイバラトミヨはハリザッコと言う別名を持っています。語源はわかりませんが推測するに針雑魚から来ているのではないでしょうか。

別名と言えば六郷を隠居地とした義重も坂東太郎(ばんどうたろう)と言う異名を持っていました。

坂東太郎とは利根川を指し、「坂東(関東)にある日本で一番大きい川」と言う意味だそうです。義重は北条軍と戦った際に7人の敵を一瞬で斬り伏せたと言った伝説が残るなど勇猛な武将だった為関東の荒武者ぶりを表現して坂東太郎と呼ばれたそうです。

とこで利根川ですがその語源となる説の一つにアイヌ語に由来すると言うものがあります。利根(トネ)はアイヌ語で巨大な谷を意味するトンナイに由来する。あるいは同じくアイヌ語で沼や湖のように広くて大きい川を意味すると言ったものです。

アイヌ語に関連する異名を持った義重がアイヌ語に関係する湧水を持つ六郷の地を隠居地としたのも偶然ではなかったのかも知れませんね。

世の中には自分達の知らないところで何らかの形でつながっている事が多く潜んでいるかも知れません。それは人と人との関係にも同じ事が言えます

六郷湧水群の綺麗な水で心を清らかにするとそのような関係性も見えてくるかもしれませんね。

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