国立公園の指定に寄与した霧島神宮

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日本で初めて国立公園に指定された霧島連峰(きりしまれんぽう)。

霧島連峰は九州南部の宮崎県と鹿児島県県境付近に広がる火山群です。

その火山群を構成する山の一つが天孫降臨の伝承地とされる高千穂峰(たかちほのみね)です。

6世紀頃、この高千穂峰と火常峰(ひのとこみね)の間の瀬多尾(せたお)に神社が建てられました。

その後、噴火による消失と再建を繰り返し、現在私たちが訪れる位置に移されたのが霧島神宮(鹿児島県霧島市)です。↑霧島神宮

その社殿は「西の日光」とも呼ばれ、朱色をベースに極彩色に彩られた彫刻に覆われ、アクセント的に施された鍍金の飾り金具が輝きを放ちます。↑霧島神宮

この美しい社殿に祀られているのは天孫降臨の神様である天饒石国饒石天津日高彦火瓊瓊杵尊(アメニギシクニニギシアマツヒタカヒコホノニニギノミコト)です

長い名前ですね(^^

要するにニニギノミコトです。

霧島神宮にはニニギノミコトを主祭神として他に6柱(神様を数える時は「柱」が単位となります)の神様が祀られています。

・木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ):ニニギノミコトの奥様です。

・彦火火出見尊(ヒコホホデノミコト):「山幸彦」として知られるニニギノミコトとコノハナサクヤヒメの子です。

・豊玉姫(トヨタマヒメ):ヒコホホデノミコト(山幸彦)の奥様です。

・鸕鶿草葺不合尊(ウガヤフキアエズノミコト):ヒコホホデノミコトとトヨタマヒメの子です。

・玉依姫(タマヨリヒメ):トヨタマヒメの妹です。

・神日本磐余彦天皇(かむやまといわれびこ):ウガヤフキアエズノミコトとタマヨリヒメの子であり、日本の初代天皇「神武天皇(ジンムテンノウ)」の事です。

霧島神宮はニニギノミコトファミリーの由緒高き神社と言う事ですね(^^)↑霧島神宮

さて、噴火による消失と再建を繰り返していた霧島神宮が現在の位置に移されたのは薩摩の地を治めていた島津氏第11代当主である島津忠昌(しまづただまさ)が1484年に兼慶上人(けんけい)に命じ再興した事によります。

島津氏は霧島神宮と大きく関わりを持っています

どのような関わりがあるのでしょうか?

主だったものを見てみましょう。

◆1578年、第16代当主島津義久(しまづよしひさ)は九州最大の戦国大名であった豊後の大友氏と「耳川の戦い」に臨むに当たり霧島神宮を訪れ参拝しています。結果は島津氏が大勝しています。

◆現在の社殿は1715年に第21代当主島津吉貴(しまづよしたか)に寄進し、重建されたものです。

◆明治維新後に制定された太政官布告により最も格の高い官幣大社となった霧島神宮の初代宮司は田尻務(たじりつかさ)です。田尻務は島津氏庶流・日置島津家(ひおきしまづけ)出身であり、幕末期に明治維新の礎を築いたとも言える島津氏28代当主となった島津斉彬(しまづなりあきら)の擁立に奔走した人物の1人です。

如何でしょうか?島津氏との強い関わりが見られますね。↑霧島神宮

さて、境内に目を向けると高さ38メートルの御神木が社殿を見守っています。↑霧島神宮の御神木

この御神木は霧島神宮が今の場所に移る前から立っている樹齢約800年の杉の木です。南九州の杉の祖先として「霧島杉」とも呼ばれ、近年では木の梢が「烏帽子を被った神官の姿」に見えることで有名ですね。↑神官の姿に見える木の梢

坂本龍馬が妻となったお竜と日本初の新婚旅行で霧島神宮を参拝した際に姉の乙女に宛てた手紙の中でもこの御神木について触れているそうです。↑坂本龍馬とお竜の看板

ところで、このような立派な御神木の立つ霧島神宮の境内はかつて霧島連峰一帯に及んでいましたが廃藩置県(1871年)の際に霧島連峰の頂上に沿って県境が引かれ、宮崎県内は境内から外される事になります。

その後、1882年に7810ヘクタールが削減され、更には日本国憲法制定(1946年)による宗教法人化で山林の大部分は日本国に譲渡されました(但し、祭典行事に必要な789ヘクタールが神宮へ返還されています)。↑御神木と霧島神宮

日本では古来、寺社の境内と自然景観は密接につながって来ましたが明治維新以降、寺社の勢力は弱まり前述したように土地制度の施工により寺社の境内の荒廃が進みました。

しかし、これによって、ある別なものの誕生に寄与します。

1934年の日本における国立公園の誕生です。

その最初の指定地の一つになったのが霧島国立公園(きりしまこくりつこうえん:現在は範囲が広がり霧島錦江湾国立公園となっています)です。

霧島国立公園の計画は霧島神宮のかつての境内を含め霧島神宮の建物も景観の一つとし、歴史、文化遺産の保護も考慮しながら策定されたそうです。

この事は後に伊勢志摩国立公園(いせしまこくりつこうえん)が指定される際に伊勢神宮の保護にもつながっています。

霧島神宮は日本の国立公園の基盤を作ったと言えるでしょう。

霧島神宮は人工物ですが自然と調和する事で美しい場を形成しています。

人工物でも自然と調和できる事を証明していると言えますね。

霧島神宮に訪れた際は、是非とも自然環境の大切を感じ取って下さい。

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