変化を続ける常滑焼

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空に向かって伸びるレンガ造りの煙突、土管を並べた壁や道、今も残る江戸時代の登窯。「やきもの散歩道」を歩けば情緒あるその風景が訪れた人を癒してくれます。

01 やきもの散歩道

02 やきもの散歩道

03 やきもの散歩道

04 やきもの散歩道

今回はその一角で常滑焼(とこなめやき)のお店morrinaを経営している杉江寿文(すぎえとしふみ)さんに常滑焼について語って頂きました。

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ご本人の写真を掲載したいので撮影をお願いしたところ「私の写真が載るより常滑焼の写真を一枚でも多く載せて頂いた方が皆さん嬉しいでしょう」とご謙遜なされたので、代わりにお気に入りの作品の一つを掲載させて頂きます。

この写真から杉江さんを想像して下さいね(^^)

06 morrina常滑焼(愛知県常滑市)は瀬戸焼(愛知県瀬戸市)、越前焼(福井県丹生郡越前町)、信楽焼(滋賀県甲賀市)、丹波焼(兵庫県篠山市今田町立杭)、備前焼(岡山県備前市伊部)と並び六古窯(ろっこよう)の一つに数えられています。

と言う事で、まずは常滑焼の歴史からお話をして頂きました。

常滑焼の始まりは平安時代まで遡るようです。

焼物の産地として発展する為には良質な陶土だけでなく、当時の焼成の為の燃料である薪が容易に手に入り、なおかつ窯を設ける為の適度な傾斜が続く坂が必要であったと言う事です。

国内でこれらの条件が揃っている所は山奥や内陸に多くありますが、常滑は珍しく海に面した地域一帯にこの条件が揃っていたということもあり、焼物の産地として発展して来ました。

そして、特に一番強調したい事として以下の事を熱く語ってくれました。

それは海に面している地の利を活かして海運によって日本各地に常滑焼が行き渡ったと言う事です。

その証拠として岩手県平泉の中尊寺の遺構でも常滑焼が出土しています。その他、青森、日本海方面、南は種子島まで流通して行きました。遠くに出荷する事により自然と遠くの文化に触れる機会も多くなった事でしょう。

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常滑焼を年代順に追ってみると大きく分けて4つのイノベーションが起きています。

平安時代:壺や甕(かめ)、日用の雑器などのいわゆる用途品として発達(用途)

江戸時代後期:茶陶と繋がりがあまりなかった常滑焼は煎茶器である急須の製作を始める。(文化)

明治時代:土管やタイルを中心とした工業製品としての発達(工業)

現代:アートや芸術の概念を取り入れ作家としての制作が盛んになる。(芸術)

このように見ると常滑焼は雑多な物に見えてしまうが逆に色々な技法が現代に残っている。これは全国的にも珍しく常滑焼の個性と思って頂きたいと言う事です。

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以上のような歴史を持つ常滑焼ですが、これを販売して行こうと思ったきっかけについて質問させて頂きました。

常滑焼は工業化に成功した事により明治以降、波はあるもののずっと景気が良く、作れば売れると言う時代が続いたようです。そして現在、豊かになった日本の家庭の食器棚は一杯になっている。

食器に限らず今の社会は物余りの社会であると感じている。このような物があふれている社会で、これからの人と物との付き合い方を整理して、提案していくことが大切だと考え、お店を始められたそうです。

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人と物との付き合いとは具体的にどのような事なのでしょうか?

物を「用途の価値」だけで見た場合、安くて丈夫で目的を果たせれば良のかも知れない。しかし、もう少し違った視点で物を見た時

「この作家さんの考え方って共感出来るな」

「この作家さんは応援したいな」

「この作家さんが良しとする暮らしに自分も憧れるな」

と言った、用途とは離れた価値を見出す事が出来る。

そして、このような思いの宿った器は大事にするし、大事にしたい物との出会いは貴重な経験でもある。この事を焼物を使って提案していきたい。

現在、morrinaでやって行こうとしている事はこれが基本になっていると言う事です。

どうですか?杉江さんの思いに皆さん共感出来るのではないでしょうか?

そして、大量生産、大量消費の現代社会において今後必要になって来る考え方と言っても良いのではないでしょうか?

明治時代に建てられた木造の土管工場を再利用したお店にも同じ思いが込められています。

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建物だけでなく店の中にある家具もほとんどが常滑の町で集めた拾い物だそうです。

建物とそこに置かれている物、そして作品が同じ空気を吸っている。もともと常滑に似合った物を集めて来た。それゆえに調和された暖かみがにじみ出ている。それがmorrinaです。

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さて、そんなお店で売られている作品はどのようにして選んでいるのでしょうか?

杉江さんが商品仕入れで一番気を付けている事、それは土を触らない人間が一番やらなければならない事でもあるそうです。

どんな事なのか?

「時の概念が存在する器」を仕入れる。

作品には作者がこういう場面のこういう時間に使って欲しいと言うぼやっとした人格が宿っている。すると、それに合った人がその器を持って行くそうです。

つまり「作り手(作者)→伝い手(お店)→使い手(お客)」の3人が物に対して同じ愛情を込められるような物の渡し方を目指していると言う事です。

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では「時の概念が存在しない器」とはどんな器なのか?

筋の通っていない器はどこかに不自然さが出るということです。普段使いでも晴れの器でも、作り手にこんな場所で、こんな席で使ってもらいたいという想いが存在すれば自然と佇まいが定まってくるものだそうです。

杉江さんはこのように作ったら使い手の動作が自然になるのでは?と言う思いで作品を手掛けられる人から仕入れたい。また、このようなコミュニケーションを自然に出来る作り手と仕事をしたいと常に思っているそうです。

morrinaには杉江さんの「時の概念」が備わった作品が並んでいると言う事ですね。どうせ同じ器を買うなら杉江さんのような伝い手(お店)から買いたいですよね。

もし常滑を訪問する機会に恵まれたなら一度morrinaさんへお立ち寄り下さい。自分に合った作品に出会えると思いますよ!

15 morrina今回の取材では杉江さんの常滑焼に対する思いを通して焼物の歴史、更には物が溢れている現代社会における今後の方向性のようなものまで垣間見る事が出来ました。

常滑焼は次にどんなイノベーションを起こすのでしょうか?もしかしたら杉江さんがキーパーソンになるかも知れませんね♪

morrinaの情報は以下の通りです。

【住所】愛知県常滑市栄町7-3

【TEL & FAX】0569-34-6566

【e-mail】morrina_tokoname@ybb.ne.jp

【Facebook ページ】https://www.facebook.com/pages/morrina/288742507869878

【営業時間】10:00~17:00

【定休日】水曜日

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