橿原神宮から見えてくる「継続」の重要性

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橿原神宮

厳粛な雰囲気に包まれた南神門(みなみしんもん)を潜り抜けると寥廓たる空間が眼前に広がる。

と同時に荘重な姿を持つ外拝殿(げはいでん)が視野に飛び込んで来る。

奈良盆地の南域、大和三山の一つ畝傍山(うねびやま:標高199m)の麓に鎮座する橿原神宮(かしはらじんぐう:奈良県橿原市)に訪れると誰もが目にする光景である。

01 橿原神宮_南神門

↑南神門

02 橿原神宮_外拝殿

↑外拝殿と背後には畝傍山

ここに祀られているのは神武天皇(じんむてんのう)だ。

古事記や日本書紀では神武天皇が日本の初代天皇であり皇統の祖としている。

となると橿原神宮の歴史も古いのかと思いきやそうではない。

創建は1890年(明治23年)4月2日だから天皇の歴史からするとごく最近のことだ。

03 橿原神宮_外拝殿

↑外拝殿

ではなぜこの地に創建されたのだろうか?

橿原の名にその答えが隠されている。

橿原と言う地名は神武天皇が畝傍山の東南「橿原の宮」に即位し建国したことに由来している。

因みに2月11日は建国記念日であるがこれは神武天皇の即位日が日本書紀に紀元前660年1月1日(旧暦)とありそれを新暦に換算すると2月11日となるからである。

ただ、考古学上の確証がないこと、また古事記や日本書紀の神話的な内容をそのまま史実であると判断する事は難しいと言った事から神武天皇は実在した人物とされていない。

とは言うものの史実が明らかにならない限り橿原神宮は日本国の建国の地とも言える場所ではないだろうか。

現時点では実在した天皇で一番古い天皇は第10代・崇神天皇(すじんてんのう:紀元前148年~紀元前29年)とされている。

神武天皇は実在したかどうかは分からないが、それでも崇神天皇から現在の今上天皇まで数えると実に1200年以上、120代以上の皇統は今も続いている。

これは何を隠そう日本が世界で一番古い国である事を示す。

実際ギネスブックにも登録されているし、世界史の年表をみても他国では勃興と消滅が繰り返されているが日本だけは一つの国として続いているのが分かる。

04 世界史年表

©プロムナード世界史

ところで世界で一番古い企業トップ3は日本の企業である事をご存知だろうか?

その3社を以下に示すがその業種をみるとそれぞれ日本の伝統を引き継いでいることが分かる。

◆世界最古の企業:金剛組(こんごうぐみ:大阪市天王寺区)

聖徳太子が四天王寺建立のため百済から招いた3人の宮大工のうちの一人、金剛重光(こんごうしげみつ)によって578年に創業された。社寺建築の設計・施工・城郭や文化財建造物の復元、修理等が主な業務内容。

◆世界で2番目に古い企業:財団法人池坊華道会(いけのぼうかどうかい:京都市中京区)

いけばな発祥の地とされる京都・頂法寺(ちょうほうじ)の六角堂の創建は587年。これが池坊の創業である。六角堂の北面にあったとされる聖徳太子が沐浴された池のほとりに小野妹子(おののいもこ)を始祖と伝える僧侶が居住していたことから「池坊」と呼ばれるようになった。僧侶は六角堂の本尊に花を供えることとなっていた。

◆世界で3番目に古い企業:西山温泉 慶雲館(けいうんかく:山梨県南巨摩郡早川町)

今から約3000年前の705年に藤原真人(ふじわらのまひと)によって開湯された。全館源泉掛け流しのこの宿は世界で3番目に古い企業と言うのもさることながら宿としては世界最古としてギネスブックに認定されている。

現代社会において世界経済を牽引している組織体と言えば企業体である。

そのトップ3企業が日本にあることは誇りである。さらに言えば日本で創業200年を超える企業は約3000社で世界最多。そのうちの7社は1000年以上の歴史を持つ。

日本がこれらの古い企業を抱えている事は国が古い事、つまり国家が安定している事と関連しているだろう。

そして国が長く続いている事自体が日本の力になっていることは間違いないだろう。

「継続は力なり」

このことわざは住岡夜晃(すみおかやきょう)という宗教家(浄土真宗の一派)の著作「讃嘆の詩〈上巻〉若人よ一道にあれ」の一節に由来している。

以下、記載するので一読して頂きたい。

青年よ強くなれ

牛のごとく、象のごとく、強くなれ

真に強いとは、一道を生きぬくことである

性格の弱さ悲しむなかれ

性格の強さ必ずしも誇るに足らず

「念願は人格を決定す 継続は力なり

真の強さは正しい念願を貫くにある

怒って腕力をふるうがごときは弱者の至れるものである

悪友の誘惑によって堕落するがごときは弱者の標本である

青年よ強くなれ 大きくなれ

汝よ 大きなことをしようとしてはならない

大きなことよりも真実がいい

名利 貪欲に乗って走ってはならない

静かに 静かに

いらぬこと いらぬ言葉 そうしたことに時を費やさず

教えを忠実に聞きつつ

一筋の道を歩ませていただくべきである

国土に 家に 周囲の人の心に

何を残して今日一日を送るのか

平凡でもいい 一筋道をゆけ

職業でも 勉学でも 信仰でも ただ一本道を走ってゆけ

一心になった時 何かができる

一本道になった時 腰がきまる

腰がきまった時 その心に輝きが出る

輝く心は悦びを感ずる

一つの念が生まれる 何年続きました

十年続いたと聞く時に その中心には誰かがいる

一本道を歩まずにはいられぬ誰かがいる

幾度も熱涙をかみしめて すべてを忍んだ人がある

中心人物がいて 自分の事のようになんでもやる

一心にやる

腰掛気分や 名利のために動く者に大した人物はない

この詩から継続がもたらすものが何なのかを知ることが出来る。

古い歴史によって育まれた日本の文化・習慣は他国にはない力を兼ね備えているはずである。もちろんそれは武力ではなく、勤勉だとか、誠実だとか、親切だとか言った性格的な力である。

日本は今こそこの力を有効に使う時代に置かれているのではないだろうか?

橿原神宮を訪れる機会に恵まれた方は日本人が継続から得られた素晴らしい力を兼ね備えている事を思い起こして頂きたい。

05 橿原神宮_外拝殿

↑外拝殿

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