水に引かれて元善光寺詣り?

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元善光寺

例えば箸は二本なければ使用できません。

あるいは靴もそうですね。

長野県の県庁所在地長野市にある善光寺

01 善光寺↑善光寺

この有名なお寺・善光寺に参拝に行かれた方はもう一つ別のお寺にお詣りに行かなければ片詣りになってしまうことをご存知でしょうか?

そのお寺とは飯田市(長野県)にある元善光寺です。

02 元善光寺

↑元善光寺

名前からして既に何らかの縁があることが想像できますね。

今から約1400年前の602年(推古天皇10年)、当時仏教の受容について論争されている最中、廃仏派の物部氏(もののべし)によって難波の堀江(現在の大阪市)に捨てられた一光三尊の御本尊を麻績の里(おみのさと:現在の飯田市)の住人だった本多善光(ほんだよしみつ)が上洛した際に見つけて持ち帰って祀ったのが元善光寺の起元とされています。

その後、御本尊は642年(皇極天皇元年)、勅命により芋井の里(現在の長野市)へ遷座され創建されたお寺が善光の名をとって善光寺となりました。

では本家である飯田の御本尊はどうなったのでしょうか?

こちらは勅命により木彫りで同じ御本尊が残されました。このことから「元善光寺」と呼ばれるようになったそうです。

03 元善光寺

その時、「毎月半ば十五日間は必ずこの麻績の古里(飯田)に帰りきて衆生を化益(けやく)せん」と云う仏勅(仏様のお告げ)が残されたことから「長野の善光寺と飯田の元善光寺と両方にお詣りしなければ片詣り」となったと伝えられているそうです。

さて、元善光寺のある飯田市ですが、あるものの生産量が日本一です。

何だと思いますか?

それは水引(みずひき)です。

何とそのシェアは全国の70%だそうです!

水引とは和紙をこより状にして糊を塗り乾かしたものです。ご存知の通り贈答品を包んだ紙の上から結んだりご祝儀袋を結んだりする紐のことです。

04 水引

なぜ水引と云うのでしょうか?

「縒(よ)った紙が元の状態に戻らないように糊水を引いたから」「こよりを着色水に浸して引きながら染めた」などの説が挙げられます。

ではその起源は?

こちらも諸説あるようですがその代表的なものとして「室町時代の日明貿易の際、明からの全ての輸入品の箱に紅白の縄が縛り付けられていたため、これを用いた」と云うものがあります。

ちなみに明は輸出用の品を他の品と区別するために紅白の縄を使用していたに過ぎなかったものを日本側が贈答に使用する習慣と誤解してそれ以降紅白の紐を贈答品にかけるようになったそうです。

勘違いが日本の伝統として引き継がれることになったわけですから間違いが間違いでなくなる場合もあると云うことですね。

さて飯田の水引です。

飯田地方はもともと和紙の生産が盛んな場所でした。江戸時代の飯田藩主・堀親昌(ほりちかまさ)がこの和紙を利用して商品価値の高い元結(もとゆい)の製造を奨励しました。元結とは髪の根を結い束ねるための紐です。

国を挙げてのクールビズ奨励によりネクタイの売り上げが落ち込むなど時の政策が産業に影響を及ぼすことがあります

飯田の元結産業もある政策によって打撃を受けました。

断髪令(1871年(明治4年))です。

そこで飯田では品質の高かった元結に改良を加えて光沢のある丈夫な水引を作り出すことに成功しました。これが飯田水引の始まりです。

今では様々な結び方が開発され芸術品の域に達しています。

05 ふるさと水引工芸館_水引

06 ふるさと水引工芸館_水引

07 ふるさと水引工芸館_水引

↑ふるさと水引工芸館さんの展示ルームに飾られている水引の数々

話は少し戻りますが水引の起源説として「小野妹子が隋から帰国した際に同行した答礼使が持参した貢ぎ物に白の麻紐が結ばれており、そこから宮廷への献上品には紅白の麻紐で結ぶ習慣が生まれた。室町時代に麻紐の代わりに紙縒りに糊水を引いた水引になった」と云うものがあります。

長野市の北西部の鬼無里(きなさ)地区は麻と和紙の産地だったそうです。これらの麻と和紙は善光寺近くの桜木町に集められ全国に出荷されていたと言うことです。

元善光寺のある飯田の特産品になった水引の起源も麻や和紙にあるとするならば偶然にも善光寺との共通点となっているわけですね。

共通点と云うことで善光寺と元善光寺に共通することわざを創ってみました。

「牛に引かれて善光寺詣り」と云うことわざがあります。

「善光寺近くに住んでいた信心のない老婆が、さらしていた布を隣の家の牛が角にかけて走り出したのを見て、その牛を追いかけ、ついに善光寺にたどり着き、それがきっかけで後々に厚く信仰するようになった」と云う話から思ってもいなかったことや他人の誘いによって良い方向に導かれることの例えとして用いられます。

飯田の場合は断髪令と言う思ってもいない政策により水引作りが盛んになりそれを求めて飯田に行った人達が元善光寺にもお詣りするようになった。これにより思ってもいなかったことが良い方向に導かれる例えを

「水(水引)に引かれて元善光寺詣り」とする。

いかがでしょうか?少し苦しいですかね(^^;

善光寺への参拝者数は6,100,000人(2014年)。それに対し元善光寺への参拝者数は118,000人(2014年)だそうです。

そうすると約600万人の人が片詣りの状態なわけですね。

水(水引)に引かれて元善光寺詣り!

水引の産地飯田に行って水引を購入し元善光寺を参拝して片詣りを解消しましょう!

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