人工の建物が広がる平野と緑豊かな自然の山々が交差する景色が絶妙なバランスを保って美しい風景を創り出しています。
↑書写山からの眺望
ロープウェイで約4分、標高371mの書写山(しょしゃざん:姫路市)からの眺望です。
↑書写山ロープウェイ
↑書写山
この書写山自身も人工の建物と自然が絶妙なバランスを保っていると言えるでしょう。
書写山には西の比叡山と呼ばれる圓教寺(えんぎょうじ)の伽藍が森の中に溶け込むように配置されています。
本堂に当たる摩尼堂(まにどう)の舞台を支える柱は京都の清水寺と同じように釘が使用されていません。目に見えない部分でも自然へ配慮しているように思えます。
↑摩尼堂
平安時代中期の966年天台宗の僧・性空(しょうくう)によって創建されたとされるこの圓教寺は訪れた人に人工物と自然、加えて歴史の融合を体感させてくれるでしょう。
京都から距離を置く土地にありながらも古くは後白河天皇、後醍醐天皇などを含む多くの皇族もこの地に足を運んだとか。
高貴な方々もこのお寺の雰囲気に包まれたかったのではないでしょうか?
このような由緒あるお寺には現在老若男女を問わず多くの観光客が訪れていますが室町時代の1398年から明治維新までは女人禁制だったそうです。
今のご時世にカップルで来ることが出来なくなったら観光客は激減しますよね(^^;
さて、明治維新以降女性も立ち入ることが出来るようになった圓教寺ですが今では外国人も多く訪れています。
訪れた外国人の中でも特に有名な人物の一人がハリウッドスターのトム・クルーズさんではないでしょうか。
圓教寺の女人禁制が解かれた明治維新と言う激動の時代に日本に訪れたフランスの軍人がいます。
江戸幕府陸軍の近代化を支援するために派遣され榎本武揚(えのもとたけあき)率いる旧幕府軍に加わり箱館戦争(1868〜1869年)に参戦したジュール・ブリュネです。
彼をモデルとして作られた映画があります。
2004年に公開された「ラストサムライ」です!
そしてそのラストサムライでジュール・ブリュネをモデルにした主人公ネイサン・オールグレンを演じたのがトム・クルーズさんです。
その時の撮影でトム・クルーズさんは圓教寺に来ました。
圓教寺はラストサムライのロケ地として使われたお寺なのです。
ラストサムライの監督エドワード・ズウィックさんが圓教寺を選んだ理由が「人工の入らない、自然の中にたたずむ建物との調和した時代的な雰囲気」を気に入ったからだそうです。
エドワード監督にも圓教寺の人工物と自然のバランスの良さが伝わったと言うことですね。
ラストサムライは「侍」つまり武士の世の終わりを描いた映画ですが圓教寺は武士との関わりを多く持っているお寺でもあります。
例えば羽柴秀吉(後の豊臣秀吉)は中国征伐の際に秀吉に加勢した黒田官兵衛(くろだかんべえ)の進言により圓教寺に本陣を置いています。
黒田官兵衛と言えば2014年にNHKの大河ドラマ「軍師官兵衛」はまだ記憶に新しいところです。
実はそのロケ地として使われたのも圓教寺なのです!
↑「ラストサムライ」、NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」のロケ地に使われた場所(右から大講堂・食堂・常行堂)
圓教寺と武士との関わりは他にもあります。
徳川家康の直臣だった徳川四天王に本多忠勝(ほんだただかつ)、榊原康政(さかきばらやすまさ)がいますが本多家と榊原家の二家は姫路城主を歴任しています。その本多家と榊原家の墓所が圓教寺の境内にあります。四天王のうちの二家の墓所が圓教寺にあるなんてすごいですね。更に言えば本多家の墓所には忠勝本人の墓もあります。
↑本多家墓所
↑榊原家墓所
また、伝説の域を出てはいませんが弁慶にまつわる話も残されています。
弁慶は義経と京の五条大橋で出会いますが、その発端となったのが圓教寺です。
圓教寺で修行をしていた弁慶は昼寝をしている最中に戒円(かいえん)と言う僧に顔へ落書きをされ恥をかかされました。それに怒った弁慶は戒円と喧嘩沙汰になります。その時戒円の持っていた櫟(くぬぎ)の燃えさしが原因で54棟の寺社が焼け落ちてしまいました。
責任を感じた弁慶は寺の再建を計ろうとしますが資金がありません。そこで他者から1000本の太刀を奪い取り釘代として提供しようと仏に誓いました。
弁慶は999本の太刀を手に入れ最後の1本となった時に義経と出会います。
圓教寺は義経と出会うきっかけとなったお寺と言えますね。
↑奥の院(左側が「護法堂拝殿」。別名「弁慶の学問所」と呼ばれ弁慶はここで修行したと伝えられている)
如何でしょうか?圓教寺は武士と多く関わりを持っていますね。
現代に至ってもラストサムライのロケ地となることでサムライ(武士)と関わりも持ったと言うことになりますよね(^^)
ところで圓教寺がロケ地となったのは「ラストサムライ」「軍師勘兵衛」だけではありません。
他に
NHK大河ドラマ「武蔵-MUSASHI-」(2003年)
映画「源氏物語千年の謎」(2011年)
映画「天地明察」(2012年)
映画「駈込み女と駆出し男」(2015年)
映画(台湾)「黒衣の刺客」(2016年)
などがあります。
圓教寺にはロケ地となりうる魅力が備わっていると言うことですね。
その魅力とは恐らく自然と歴史を刻み込んだ人工の建造物とが絶妙なバランスで融合していることで創り出される雰囲気なのでしょう。
皆さんも自分に持ち合わせているものをバランスよく融合させ圓教寺のように魅力ある個人を演出して下さいね。
【English WEB】
http://japan-history-travel.net/?p=5310