建物の中はなんとも言えない甘い匂いが漂っていてフワッとした気分にさせてくれます。
鹿児島の代表的な特産品の1つ薩摩焼酎。
鹿児島の中でも屈指の焼酎の産地、いちき串木野市にある焼酎蔵の1つ濱田酒造さんの伝兵衛蔵に行って参りました。
と言う事で今回は伝兵衛蔵の写真と共に薩摩焼酎について学びましょう!
まず焼酎について簡単にご説明させて頂きます。
焼酎とは「蒸留酒(じょうりゅうしゅ)の一種であり日本国内で定められた酒税法による種別基準で単式蒸留焼酎と連続式蒸留焼酎に分けられている(2006年5月1日酒税法改正による)」ものを言います。
これでは全く分かりませんね(^^;
もう少し詳しくお話ししましょう。
蒸留酒とは醸造酒(じょうぞうしゅ)を蒸留して造ったお酒です。
では醸造酒とは?ってなりますね。
醸造酒は原料を酵母によりアルコール発酵させて造ったお酒の事。ワインやビール、日本酒がこれに含まれます。
次に蒸留についてです。
蒸留とは液体を熱して発した蒸気(気体)を冷やすことで、より純度の高い液体を造る事を言います。お酒においての蒸留はアルコール度数を高めるために行われます。
と言う事で焼酎とは醸造酒(じょうぞうしゅ)を蒸留して造った蒸留酒と言う事になります。
大体お分かり頂けたでしょうか?続いて単式蒸留と連続式蒸留の違いについてです。
単式蒸留はアルコール発酵した酒の醪(もろみ:かすをこしていない酒)を基本的に1回のみ蒸留を行う方法です。これに対し連続式蒸留は連続的に蒸留する方法で蒸留機の中で何度も蒸留行います。
よって単式蒸留は原料の風味を残したい時に用いられ、連続式蒸留は効率的に高アルコール度数のお酒を作りたい時に用いられる方法のため原料の風味があまり残らない事になります。
以上が焼酎の説明となります。では日本における焼酎はどのような起源を持っているのでしょうか?
実は正確には分かっていないようです。比較的有力な説としては、シャム(現在のタイ)から琉球経由でもたらされたと言うものです。
16世紀頃の文献には焼酎に関しての記録があるそうですから少なくともこの頃から飲まれていた事になります。
例えば1546年に薩摩国(現在の鹿児島県)に上陸したポルトガルの商人ジョルジェ・アルバレスは蒸留酒を常飲していた事を記録に残しているそうです。また、鹿児島県大口市の郡山八幡神社で発見された棟木札(むねきふだ:寺社・民家など建物の建築・修築の記録・記念として、棟木・梁など建物内部の高所に取り付けた札)には「神社の神主がケチで一度も焼酎を飲ませてくれなかった」と神社の補修に従事した大工の愚痴が書かれているそうです。
これは室町時代の1559年に書かれたもので日本国内において焼酎の呼称が明記された最も古い記録とされています。
最も古い記録が愚痴とは少し笑えますね(笑)
以上が焼酎の始まりに関してですが上記の文献に出てくる焼酎は米が原料の米焼酎です。
一方、薩摩焼酎の定義を調べると「鹿児島県産のサツマイモを使用し、製造から容器詰めまでの全工程が鹿児島県内(奄美を除く)で行われた焼酎」とあります。
そうなると薩摩焼酎の始まりは?と言う事になりますね。
薩摩焼酎の原料はサツマイモと限定されていますからサツマイモがなければ薩摩焼酎は造れない事になります。サツマイモのルーツはメキシコにあり、日本に伝わったのは1600年前後とされていますが栽培が始まったのは1700年前後のようです。この事から薩摩焼酎が生まれたのは江戸時代中期以降と推測されています。
ところが本格的に造られるようになったのは意外にも遅く幕末です。しかもその背景には銃の製造が大きく関わっています。
薩摩焼酎と銃。一体どのようなつながりがあるのでしょうか?
幕末の日本は欧米列強のアジア圏への進出に大きな脅威を抱いていました。この欧米列強の進出に最も危機感を持っていたのが薩摩藩です。
当時の藩主・島津斉彬(しまづなりあきら)はこれに備える為、西洋式の銃の製造を推し進めました。
その銃は雷管銃(らいかんじゅう)と呼ばれるもので弾丸を発射させる雷汞(らいこう)と言う部分の製造にエチルアルコールが必要でした。
そしてこのエチルアルコールの原料として米焼酎が使用されました。
しかし「米を使うと庶民が食べる分が不足してしまう。そうなると米の相場を高騰させる可能性が高まる」あるいは「薩摩藩は土地が痩せていて稲作には向いていなかった為、他藩より大量に米を購入して米焼酎を作っていた。その為、高いコストがかかってしまう」などの課題がありました。
そこで斉彬は米焼酎の代わりに薩摩藩で手に入れ易いサツマイモで焼酎を作り、その蒸留過程から工業用アルコールを抽出し、銃の製造に利用しました。
更に、余ったものは薩摩の特産品にせよと助言したそうです。
同じものでもアイデアによって異なる価値を持たせる事が出来るわけですね。このような経緯で本格的な製造が始まった薩摩焼酎ですが今では1000億円を超える地場産業に育ち鹿児島を代表する特産品となりました。
そしてワインの「ボルドー」、ウイスキーの「スコッチ」「バーボン」などの欧米列強のお酒と並びWTO(世界貿易機関)によって定められた産地指定銘柄として世界的にも評価されています。
ある意味、薩摩(鹿児島)は昔も今も欧米と肩を張り合っていると言えますね(笑)今回は濱田酒造さんの伝兵衛蔵を見学させて頂きましたが鹿児島には他にも見学させて頂ける酒蔵は幾つもあります。鹿児島に訪れる際は薩摩焼酎の酒蔵見学も是非予定に入れて下さいね!
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