秋山兄弟生誕地で見る兄弟の性格

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兄弟の性格の違いが日本最大級の危機を救ったのかもしれません。

20世紀初頭は西洋列強の植民地争いの最盛期。

その触手は日本に対しても確実に迫っていました。

そこで日本が決死の覚悟で挑んだのが日露戦争(1904年2月〜1905年9月)です。

当時の日本は国力・軍事力共に西洋列強とは歴然とした差があり、日本は負けて植民地化されるだろうと各国は思っていました。

しかし、陸の戦いでは旅順要塞を陥落させ、奉天会戦で奇跡的な勝利を収め、海の戦いである日本海海戦では圧倒的な強さでバルチック艦隊を撃滅し、大勝利を納めました。

日本は日露戦争の勝利国となったのです。

陸の戦いと海の戦いでそれぞれ活躍した兄弟がいます。

兄の秋山好古(あきやまよしふる)と弟の真之(せねゆき)です。

兄の好古は「日本騎兵の父」と呼ばれ、好古を旅団長とする騎兵第一旅団は世界最強といわれたコサック騎兵10万をわずか8千の兵で対峙し、陸の戦いを勝利に導きました。

一方、弟の真之は第1艦隊旗艦「三笠」に乗艦し、連合艦隊司令長官・東郷平八郎(とうごうへいはちろう)の下で作戦担当参謀となり、バルチック艦隊を撃破する作戦を指示し、日本海海戦を圧倒的な勝利へと導いたのです。

秋山兄弟のエピソードを挙げたら枚挙にいとまがないため、今回は2人の子供の頃について兄弟の性格と言う視点から少し触れてみたいと思います。

一般的には兄の性格は「きまじめで保守的、慎重で堅実な性格」。弟は「自由奔放なところがあり、要領がよく、大胆な行動力や発想を要した性格」と言ったところでしょう。

では秋山兄弟はどうなのでしょうか?

2人は愛媛県松山市の松山城下で生まれました。

現在、その生誕地には、残された写真などを元に原型に近い形で生家が復元され、秋山兄弟の関係資料などが展示されています

↑秋山兄弟生誕地

好古は1859年1月7日生まれ。

好古が10歳の時の1868年3月20日に真之が誕生しました。

赤ん坊の時の好古はよく泣いていたそうです。

あまりにもよく泣くので母親の貞子(さだこ)は「この子が一人前の人間になれるだろうか」と心配することもあったようです。

また、秋山家に50年近くも女中として仕えていたお熊(くま)と言う婆さんは好古の子供時代のことを「いつも鼻汁を垂らしてよく泣く坊さんでございました」と語っていたと言います。

そんな好古が世界最強といわれたコサック騎兵10万を相手にする事になるとは誰も思わなかったに違いません。

好古は学校で騎兵を徹底的に学び、ものおじしない軍人へと成長したのです。

日露戦争後も陸軍で主に騎兵に関係し続け、晩年は私立北予中学校(現在の愛媛県立松山北高等学校)校長に就任すると言う堅実な道を歩みました。↑秋山兄弟生誕地_秋山好古の像

さて、弟の真之です。

「雪の日に 北の窓あけ シシすれば あまにりの寒さに チンコちぢまる」

真之が7歳の時に父や兄たちの見よう見まねで短歌を作り始めた頃の歌です。この歌に弟としての真之の性格が表れている気がします。

真之はやんちゃなガキ大将でした。

14歳の時のエピソードが残っています。

真之は花火製造と火薬の調合法が書かれた本を友人の家で見つけます。仲間と共にその本に従って花火を作り近所の野原で打ち上げました。

真之は巡査が駆けつけて来る事を予め予想し、周囲を見張る係などを配置した後に花火を打ち上げたと言うことです。

予想通り巡査が駆けつけて来たのですが、つかまってしまい家に帰ってから母の貞子にこっぴどく叱られたそうです。

この行動力が後の日本海海戦での作戦へとつながっていったのではないでしょうか。

日露戦争から戻った真之は、霊力の研究を始め、やがては宗教研究に没頭して行ったと言います。この点、兄の好古と違い弟の性格である自由奔放さが影響したのかもしれません。↑秋山兄弟生誕地_秋山真之の像

こうしてみると秋山兄弟の性格は一般的な兄弟の型にはまっていたように思えます。

最後に余談になりますがもう一組の兄弟に触れておきたいと思います。源頼朝源義経です。

兄の頼朝は源氏の棟梁として鎌倉幕府を開き、政治によって世を治めました。弟の義経は源平合戦で戦略家として平家軍を次々に破って行いき源氏を勝利へと導きました。

これを秋山兄弟と比較した時に、なんとなく重なるところがあるように思えませんか?

興味深いのは、義経は「一の谷の戦い」において騎馬集団による奇襲をかけて勝利しています。秋山好古の「騎兵」と言うキーワードと真之の「戦略家」と言うキーワードが融合しているように感じます。

兄弟と言う視点から歴史を振り返ると興味深いものが見えて来ます。それは現代においてもビジネスの世界でも同じではないでしょうか。

秋山兄弟生誕地に訪れる機会がありましたら2人の子供の頃に思いを馳せながら見学して頂ければと思います。

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