美瑛(北海道)の人口は約1万1000人。そこへ訪れる観光客は年間30万人だそうです。
特別な建物があるわけではありません。美瑛の最大の見世物は「畑」と「牧草地」と「丘」だけです。なぜ美瑛にはそんなに人が集まるのでしょうか?
それはなだらかな丘陵地帯に広がる畑と牧草地が織りなす美しい牧歌的な風景がせわしい日常の喧騒を忘れさせ心を落ち着かせてくれるからではないでしょうか?
美瑛の景観はイギリスやフランスのカントリーサイドの景観に似ており異国の地に訪れたような錯覚を持たせてくれます。それもまた美瑛に観光客が多く訪れる理由の一つでしょう。
↓イギリスのヨークシャー地方の写真と美瑛の写真を見比べて見て下さい。
美瑛はそこにあるものの魅力を最大限に引き出しているように思えます。人もその人に備わった魅力を最大限に引き出せば周りから注目されるのではないでしょうか。
さて、そんな美瑛に突如現れたのが「青い池」です。
昭和63年(1988年)12月、十勝岳が噴火した際に火山泥流を貯める施設としてコンクリートブロックのえん堤を建設しました。その結果そこに水が溜まり池が出来たと言う事です。
自然界に青色はほとんど存在しません。
「海や空は青いじゃないか!」と言われそうですが、実際に海に行って海水を手にすくってみても青くはありません。空も同じ事が言えます。
例えば自然界に赤は多く存在します。リンゴやトマト、バラの花もそうです。黄色も同じですレモンやタンポポ、ヒマワリなどが存在します。ところが青の場合すぐには思い浮かびません。
物体の色は、その物体が反射した色だそうです。つまり物体が青色に見えるようになるには青色だけを反射しなければならないと言う事です。自然界には青色光だけを反射する構造をもつ物体が少ないと言うことです。
しかし実際には昔から青の塗料は使われて来ました。どのようにして造り出したのでしょうか?
その一つにラピスラズリ(宝石)があります。高松塚古墳(奈良県明日香村)の壁画にもラピスラズリの青が使われているようだということが最近の研究で明らかになりました。シルクロードを伝わって日本にも入ってきたようです。そして様々な宗教の仏具などにも利用されてきました。
このような事から青色は人間にとって重要な色であり憧れの対象でした。そう言った視点から冠位十二階(冠の色)を見ると私の個人的な解釈ではありますが青の位置付けに関し面白い見方が出来ます。
冠位十二階は朝廷に仕える臣下を12の等級に分け、地位を表す冠を授けるものです。「日本書紀」によれば、冠位十二階は推古天皇11年(604年)に始めて制定された冠位となっており、天皇が臣下のそれぞれに冠(位冠)を授け、冠の色の違いで身分の高下を表すものであると言う事です。
12回の冠位は以下の通りで、それぞれに色が割り当てられています。
大徳=濃紫
小徳=薄紫
大仁=濃青
小仁=薄青
大礼=濃赤
小礼=薄赤
大信=濃黄
小信=薄黄
大義=濃白
小義=薄白
大智=濃黒
小智=薄黒
この色の割り当てに関しては諸説あるようですがその一つが五行思想に基づいたものとされています。五常の徳目(仁・礼・信・義・智)の青・赤・黄・白・黒の上に、徳目を統べると考える「徳」を置き、帝王の色である紫を当て、大小に分け濃淡をつけたと考えられています。
この場合、青の位置付けは帝王の色である紫の次と言う事になり、青の重要性を示しているように思われます。
さて、青の語源に注目してみましょう。
アイヌ語に関する著書を多数出されている故・片山龍峯(かたやまたつみね)さんによれば、以下に記す通り、大和・アイヌ・琉球における語源の流れは同じところから派生したもと考察されています。
■大和(日本)語のアオ:
「アフ=会う・合う」、または、その連用形の「アヒ=間(隣合うの意)」と関連した語である。
■アイヌ語のアオ:
アフ(会)の他界観とも関連するものと捉えられている。アオとは黒と白の範囲の中間色を意味する「間(アヒ)」からきているとされ、さらに現世と他界の中間の意も含んでいる。
■琉球語のアオ:
沖縄でも青はアイヌ語と同じ「アヒ(間)」から派生した語である。
青は日本を1つにつなぐ色なんですね。
ところで再び青い池に話をもどしましょう。青い池の水が青く見える理由は以下の通りだそうです。
『白金温泉地区で湧き出している「白ひげの滝」などから、アルミニウムを含んだ水が、美瑛川の水と混ざると目に見えないコロイド(二つの相からなる微細不均質な物質)が生成されます。太陽からの光が水中のコロイド粒子と衝突しいろいろな方向に散乱され、コロイド粒子が光の散策を促し、波長の短い青いい光が散乱させやすいため、その光が私たちの目に届き、青く見えると言われています』
ただ、この理由も推測の範疇を出ておらず青い池の水が青く見える明確な原因は解明されていないそうです。
やはり青は神秘の色ですね!
「青い池」は美瑛の魅力を引き立たせるエッセンシャルの役割を果たしているのかもしれませんね。美瑛に訪れた際は是非「青い池」にも立ち寄ってみて下さい。