夕日から放たれた光は穏やかな湖面に反射しその煌めきは一筋の道となって見る人の視覚を潤してくれます。
この美しい風景は一日の終わりを飾るために自然が与えてくれる最高の贈り物ではないでしょうか。
宍道湖(しんじこ:島根県)は夕日スポットとして有名な湖です。
湖畔に位置する松江で一時期を過ごした文人・小泉八雲(こいずみやくも)も夕日に魅せられた1人。彼の著書「知られざる日本の面影」の中ではその美しさが表現されています。
この夕日の美しい宍道湖で唯一の島・嫁ヶ島(よめがしま)を含む景観は昔から高く評価されており人々から大切に守られています。
↑嫁ヶ島
例えば松江城築城主の堀尾吉晴(ほりおよしはる)は天守閣からの眺めに感動して嫁ヶ島を「彼(か)の島は湖中の一勝地なり」と評したそうです。
それが理由になっているのか定かではありませんが松江城から嫁ヶ島を眺める線上には高い建築物を建ててはならないという不文律があるのだとか。
↑松江城天守からの眺め
あるいは1935年(昭和10年)には松江出身の総理大臣・若槻礼次郎(わかつきれいじろう)からの寄付により嫁ヶ島の景観保存の為に13本の松が植えられたことも。
美しい景観は誰もが守りたくなると言う事ですね。
ところで嫁ヶ島と言う島の名前が気になりませんか?
嫁ヶ島にはいくつかの伝説が残っているそうでが、その中の一つ「姑にいじめられた嫁が行方不明となり、その数日後に湖から嫁のなきがらを乗せた島が浮かびあがって来た」と言う伝説が名前の由来となっているそうです。
悲しい伝説ですね。
さて、嫁ヶ島伝説の残る宍道湖ですが神話も残されています。
ヤマタノオロチ神話は宍道湖の主な流入河川の一つ斐伊川(ひいがわ)が舞台となっています。
また「出雲国風土記(いずものくにふどき)」の「国引き神話」には八束水臣津野命(やつかみずおみつのみこと)が最初に作った出雲国が小さかった為、隠岐諸島(おきしょとう)あるいは新羅(朝鮮半島)から土地を引っ張って来て付け加えたのが島根半島だと記されているそうです。
つまり島根半島が出来た事により宍道湖が生まれたと解釈することができます。人工湖ならぬ神工湖と言うことになりますね(^^)
宍道湖は海水と淡水が混ざり合う汽水湖であり多種多様な生物が生息し2005年(平成17年)にはラムサール条約(湿地の保存に関する国際条約。水鳥を食物連鎖の頂点とする湿地の生態系を守る目的)に登録されています。
豊富な水産資源を持つ宍道湖は古くから漁が営まれていた形跡が残っており縄文時代の石錘(せきすい:漁網に使用された石のおもり)や骨角製の矠(やす:小型の銛(もり)のような漁具)が出土されているそうです。
そして何と言っても宍道湖から受ける嬉しい恩恵の一つは「相撲足腰」ではないでしょうか?
でも相撲足腰って何?って思いますよね。
スモウアシコシとは宍道湖で獲れる代表的な7種の魚介類、スズキ・モロゲエビ・ウナギ・アマサギ・シジミ・コイ・シラウオの頭の一文字を取ったものです。
これらは“宍道湖七珍(しんじこしっちん)”と呼ばれ郷土の味覚として親しまれています。
特にシジミは有名ですよね。
早朝に宍道湖へ行けばシジミ漁の漁船が行き交う松江の風物詩とも言える光景を目にすることが出来ます。
シジミには肝機能を強化するオルニチンが含まれている為、俗に「シジミの味噌汁は二日酔いに効く」と言われています。
↑シジミの味噌汁とシジミのおにぎり
この地方に旅行に来たら夜は夕日を見ながらお酒を飲んで翌朝はシジミの味噌汁で肝機能を回復させましょう!