こんぴらさんへの参拝をするに当たっては予備知識が必要なのか?

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何の予備知識も持たずに訪れる場所には疑問が点在しています。

もちろん何も気にせず通り過ぎれば何も無いまま終わってしまうので好奇心を持つ事を心がけていなければならないですけど。

長い階段で有名なこんぴらさんの愛称で親しまれている香川県の金刀比羅宮(ことひらぐう)

ここを訪れる際にほとんど下調べをしなかった為、好奇心を持って廻る事が出来ました。

それでは、785段の石段を登ってこんぴらさんの御本宮まで行きましょう!

まずは表参道から。さあ!最初の階段です。階段沿いのお土産屋さん。燈明堂(とうみょうどう)と釣灯篭(つりどうろう)(168段)初代高松藩主、松平頼重(まつだいらよりしげ)により寄進された大門(365段)大門をくぐってすぐのところに並ぶ5軒の出店(365段)この5軒の出店はこんぴらさんへの功労があった先祖をもつ五家の家筋の人達で五人百姓と呼ばれています。境内で商売を許されているのはこの5軒だけです。

ここでは加美代飴(かみよあめ)と言うこんぴらさん名物のべっこう飴のみを販売しています。砕いて食べればご利益があるのだとか(金槌付きです)。五人百姓を過ぎた後に続く桜馬場と呼ばれる石畳の道。神馬のいる広場には何故か象や巨大なプロペラのモニュメントが???(431段)

こんぴら狗(いぬ)とは江戸時代、遠方のためにこんぴらさんへ訪問することが難しい人が道中の費用や初穂料を飼い犬の首に巻き、飼い主が旅の人に託した犬の事です(431段)桜馬場西詰銅鳥居(431段)をくぐって先へ進みましょう。表書院(477段)まだ階段は続きます。荘厳な造りの旭社(628段)最後の階段!金刀比羅宮本宮に到着です!(785段)絶景かな絶景かな。御本宮から三穂津姫社(みほつひめのやしろ)へ続く回廊。三穂津姫社。三穂津姫社の横にある絵馬堂にはなぜか多くの船の写真が奉納されています。山の上にある神社になぜ船なのでしょうか???

相反するものが同居する場面に出くわすと意外性を感じ理由を知りたくなりますね。

実はこんぴらさんは海上交通の守り神なのです。

だから漁師さんや、船舶などの海事関係者、あるいは海上自衛隊からも信仰されています。

しかし、金刀比羅宮の御祭神は大物主神(おおものぬしのかみ)なので海にはあまり関係ありません。

ではなぜ海が関係して来るの?と言う事になりますね。

そこには日本の宗教観の歴史に基づく神仏習合と本地垂迹(ほんじすいじゃく)、神仏分離が関わっています(詳細については以前投稿させて頂いた記事「複雑な事情を持つ江島神社と弁財天」を御参照下さい)。

金刀比羅宮が鎮座する山は像頭山(ぞうずさん)と呼ばれています。

もともとこの山にあった松尾寺には仏教の守護神である金毘羅(こんぴら)様が祀られていたそうです。

その一方で大物主神を祀る琴平神社が存在していたとの事。

中世以降、神仏習合の影響により琴平神社は松尾寺に吸収される形で大物主神の垂迹とされる金毘羅様が大権現として祀られる寺社へと変わりました。

その後、明治の神仏分離により松尾寺は廃寺となり大物主神を祭神とする神社として金刀比羅宮へと改称、現在に至っています。

さて、海の神様との繋がりについてです。

それは金刀比羅宮の前進である金毘羅大権現に起因しています。

金毘羅大権現の名は薬師如来十二神将の筆頭である宮比羅(くびら)から来ています。宮毘羅は金比羅とも書くそうです。更にこの宮比羅はガンジス川に棲むワニを神格化したヒンドゥー教の水神であるクンビーラから来ていると言う事です。

ところでなぜ象頭山の松尾寺に金比羅様が祀られていたのでしょうか?

その理由は松尾寺の開山にあります。

松尾寺の開山については修験道の役小角(えんのおづぬ)が象頭山に登った際に天竺(てんじく:現在のインド)の霊鷲山(りょうじゅせん:別名・象頭山)に住む金毘羅様の神験(神仏の不思議で測り知れない力)に遭ったと言う伝承が残されているそうです。

いずれにしても金比羅様は天竺にしろ日本にしろ海ではなく山に居たと言う事ですね(^^;

ちなみにワニは現生の動物群の中で鳥類とは進化系統上最も近縁の関係だそうです。もしかしたら山の上まで飛んで来たのかも???

これでなぜこんぴらさんが海の神様なのか?階段の途中に象やプロペラのモニュメントが置かれていたのかおわかり頂けましたか?

こんぴらさんのルーツは水の神様。象のモニュメントは象頭山から、プロペラのモニュメントは船のスクリューだったと言うわけですね。

さて最後に一つだけ疑問が残ります。

こんぴらさんの名前の由来とも言える金比羅大権現はどこに行ってしまったのでしょう?

それは現在、象頭山の麓、こんぴらさんへの参道から少しはなれた松尾寺に祀られています。

そうです、松尾寺は神仏分離の時に廃寺に追い込まれたお寺です。

松尾寺は旧松尾寺の塔頭であった普門院によって継承されていたのです。

つまりこんぴらんさんへ訪問したらこの松尾寺も参拝しないといけないと言う事になりますね。

今回、下調べせずにこんぴらさんへ行った為、松尾寺には寄りませんでした。下調べをして行かなかった事の代償ですね。

ただ、その代りと言っては何ですが色々なものに好奇心を注ぐ事が出来、色々な事を知る事が出来ました。

どちらが良いのかは分かりません。

少し意味合いは違うかもしれませんが「人間万事塞翁が馬」と言ったところでしょう。

但し、この記事を読んだ方は下調べ済となりますので松尾寺に寄ると言う選択肢は出来た事になりますね(^^;

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